大塵塩蔵雑記帳

異常者大害虫の備忘録

ヌタウナギのお話②

さて、こうして届いたヌタウナギ達であるが、この画像を見てほしい

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よく見ると、2種類いることがおわかり頂けるだろうか?

ここで少しヌタウナギ類の分類について軽く解説する。日本で見られるヌタウナギ科の魚は、2属5種が知られている。ホソヌタウナギ属とヌタウナギ属である。

ところで、時折メクラウナギヌタウナギに改名されたと思っている人がいるが、実際には異なる。メクラウナギはホソヌタウナギに改名されたのであり、ヌタウナギは昔からヌタウナギである。

なお、ヌタウナギ科の学名はMyxinidaeであり、旧メクラウナギ属がMyxinであるから本来はメクラウナギ科と呼ばれていた。しかしホソヌタウナギとなったことによりヌタウナギがホソヌタウナギ科というのは何とも引っかかるので、学名との不一致は仕方ないということで、現在Myxinidaeはヌタウナギ科と呼ばれている。なんとも気持ちの悪い話である。個人的な意見であるが、ポリコレで和名を変更するのは余り好きな流れではない…

余談はここまでにして、ヌタウナギの分類の話に戻ろう。ホソヌタウナギ属、ヌタウナギ属ともにほとんど全ての種が深海魚であるのはご存知の通りであるが、実は一種のみ15メートル程度に住む浅海性の種が存在する。標準和名ヌタウナギと呼ばれる、Eptatretus burgeriである。上の画像で肌色のものが本種である。

では、黒いものは何かというと、これはクロヌタウナギEptatretus atamiである。こちらはイメージ通りの深海魚で水深45〜400mに生息する。

これほどまでに生息水深が異なると、好む温度というものは著しく異なる。実際、ヌタウナギは20℃程度まで生息するようだが、クロヌタウナギは10℃以下を好む。

なぜこんな話をしたのかというと、飼育する上で電気代が高価な水槽クーラーを使いたくない私は、クロヌタは飼育できないためである(笑)

ヌタウナギ達が我が家に届いた時、この好む水温の違いを実感させられた。クール便で届いたのだが、元気に動き回るクロヌタに対してヌタウナギはみんなひっくり返ってダランと垂れていたのである。これ、飼育大丈夫か…と考えつつも、用意しておいた20℃程度の水槽に慎重に水合わせをしていく。とりあえずヌタウナギ3匹と、クロヌタ1匹を試してみることとした。

すると、驚くべきことに、少しずつ元気を取り戻していくヌタウナギに対してクロヌタはみるみる弱っていったのである。

私はとりあえず、クロヌタを冷蔵庫の生簀(仮)に移動しつつヌタウナギを見守った。

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画像は選ばれし3匹のヌタウナギ達である。

 

さて、ここで一休みしてから夜8時、翌日に迫るヌタウナギパーティーの用意が始まった。3キロの冷凍ヌタの冷蔵庫解凍を始めつつ、活ヌタ達の下準備をするのだ。

ヌタウナギの有名な食べ方として、棒あなごというものがある。棒に刺して干したヌタウナギを皮が焦げるまで焼くというシンプルな料理だ。せっかくこんなに個体数があるのだから、棒あなごは試したい。しかし、棒がない。ということで、紐あなごを作ることとした(笑)

作り方はごく単純である。まずヌタウナギの内蔵を抜き、頭に開けた穴に紐を縛って吊るすだけだ。が、これが予想外に難しい。活ヌタウナギというのは大量のヌタを分泌するため、とても手で掴めないのだ。ラバー軍手を装着し、セリアの出刃包丁を振るう。ヌタウナギの皮はイールスキンとして財布やカバンに使われるほど丈夫であり、割くのは容易でない。その上、ヌタウナギは皮の下に血液を溜めることができるようで、裂いた隙間から血が吹き出し、返り血まみれになってしまった。

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ヌタウナギの血液というのは特殊で、脊椎動物としては唯一浸透圧が海水と同じである。軟骨魚類アンモニアで浸透圧調整をし、硬骨魚類が腎臓で浸透圧調整をする中、ヌタウナギはそもそも浸透圧調整が必要ない血液を持つのである。だからなのかは不明だが、妙な臭いのする血にまみれ、何とも悲しい気持ちになってしまった。

苦しみつつ、シンクを巨大スライムにしつつ、2時間かけてなんとか捌ききった5匹をベランダに吊るした様子がこちらである。なお、この時4匹程度はまだ動いていた…

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時間は深夜11時過ぎ、キャス等しつつ朝を待つ。朝5時から翌日の料理の仕込みを始めるためだ。

 

続く…